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こっちに向かって歩いてくる

その犬は年をとっていて

足元はおぼつかず

とてもゆっくり

 

 

近づいて 興味なさそうに私を見上げる

 

少し笑っているようにも 憐れんでいるようにも見える

音もしない鼻先

 

 

 

 

 

 

 

犬は私を通り過ぎて

すぐそばでじっとしている

 

 

 

 

小さな後ろ姿 このまま連れて帰りたくなる

 

反応の少ない頬を撫でて

膝に乗せて あるいは抱きしめて

お互いの鼓動の音を確かめていれば

 

今夜はぐっすり眠れる気がする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐ春が来ようというのに

冬はまだ  一歩も動こうとしない

今年の冬は一段と寒い

 

 

私の中でどんどん距離があいて

会えないことも いつからかなんとも思わなくなった

 

あなたの顔を忘れてしまった

魔法のようなぬくもりを 私はもう信じなくなった

 

 

 

けれど突然  

大声で叫び出したくなるときがある

そして私は 何か私の中の気に入らない

内側を 誰かにさらけ出したくなる

 

 

 

誰に見せれば気が済むのか

何て叫べばおさまるのか

 

いつまでたってもわからないのだけれど

 

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